第2回委員会「自治体ウェブサイトの目標と実態」

講師:安藤昌也氏(アライド・ブレインズ株式会社)
日時:2005年12月9日
場所:NPO法人市民コンピューターコミュニケーション研究会(JCAFE)東京事務所

1.曲がり角に来た自治体ウェブサイト

自治体のウェブサイトは、天災が続いた2003 年頃にひとつの転機を迎えました。市民だけではなく市外の人たちへも、支援に関する情報提供が求められていると認識されるようになったのです。

また、都会では防犯や子供の安全が問題になっており、市がこうした情報を集約して市民にフィードバックすべきだとも言われてきました。自治体のウェブサイトは、行政と市民とのコミュニケーションの窓口として重要になり、さらに市民同士のコミュニケーションの支援も求められるようになってきています。

2.いろいろな自治体のウェブサイトの顔とジレンマ

自治体サイトはどこも似ています。その理由には、多様なユーザーに合わせようとするあまり、自治体の顔というものがどんどん薄くなってしまうというジレンマがあります。
たとえば三鷹市の場合は、住民向け、訪問者向け、それから業者向けという3つの顔を作っています。多様な利用者のニーズに応えるための1つの方法と言えるでしょう。

一方、某政令指定都市のリニューアル前のサイトは、トップページは整然としているように見えても、少し中に入ると各課が勝手にページを作っていて、ページをめくればめくるほど違うものが出てくるという例があります。

また別の例では、トップページにある防災情報のボタンをクリックすると、最初に天気情報が表示されます。一番大事な情報が奥にあるのはよくありません。利用者が必要とする情報を的確に提示することが、アクセシビリティ及びユーザビリティ上、極めて重要なポイントです。

3.CRONOSによるアクセシビリティ危険度

現在、アライド・ブレインズではCRONOS(クロノス)というアクセシビリティ・点検エンジンを開発しています。これで調べると、たとえば文京区は6階層くらいに収まり、その中ですべての情報が得られるようになっています。たいていの場合、整理すると6から8階層に収まり、4階層目くらいの情報量が最も多くなるのが理想形です。

4.自治体サイトの2つの方向性

自治体には今、2つの力が働いています。まずはガラス張りの情報公開が求められています。市の行政事務だけではなく、議会の情報や、過去の行政市長の政策をファイルしておくといった機能です。

もう1つはコミュニティです。掲示板、目安箱、近隣情報、あるいは地域SNS(Social Networking Site)などが流行っており、なんらかの形で行政がそういう土俵を提供する工夫をしていかないとならないでしょう。

コミュニティについては、使い勝手の良さの中にも顔の見える街の例として、世田谷区のウェブサイトを見てみましょう。トップページの7割ほどが「米」の写真で占められていますが、横にはグローバルナビゲーションが適切に配置され、クイックメニューで目的のページに行けるようになっています。米の写真をクリックすると「今年も郷土資料館で作った米が取れました」という情報にリンクされていて、ただ写真を載せているのとは意味が違います。

また、富山県南砺市のウェブサイトでは、市民からの質問を「なんでも窓口」から受けつけると、「受けつけました」というマークが出てきます。市民の声を大事にしていることを前面に出したいという市の意向があったそうです。
さらに、市民活動が掲載されているページの隣には、行政が果たすべき情報の提供もあり、コミュニティと行政の関連性をよく考えて作られているページです。

○安藤昌也氏プロフィール:アライド・ブレインズ株式会社 シニアコンサルタント。大手情報システム会社などを経て、1998 年、アライド・ブレインズの設立に参画。